Profile
環境コンサルタント・武本佳弥 (環境省登録 環境カウンセラー)
企業や地域における環境配慮や資源循環の取り組みを、実践につながる形で支援。市民向け講座やセミナーでは、身近な暮らしの中にある環境課題を題材に、日常生活で無理なく取り入れられる環境配慮の行動を分かりやすく伝えている。
ペットボトルのいいところ、わるいところ
暮らしに欠かせないペットボトルは、「PET(ポリエチレンテレフタレート)」というプラスチックから作られています。原料には石油が使われ、精製されたナフサをもとにPET樹脂が製造されます。これを加熱·成型することで、飲料用などさまざまな容器へと加工されます。ペットボトルは軽くて丈夫で、持ち運びやすく、リサイクルしやすいといった利点があります。一方で、使用後に適切に回収·再資源化されなければ、資源の浪費や二酸化炭素(CO2)の排出増加につながり、環境への負担が大きくなります。
※参考:英紙ガーディアン(2017)
ペットボトルは世界中で広く普及しています。年間消費量は、2016年に約4,800億本、2021年には約5,833億本に達したと推計されています。これは1分間に約100万本が消費されている計算になります。
適切に処理されないペットボトルは、雨や風によって海や川へ流出し、海洋プラスチックごみとなります。ウミガメや魚、海鳥が誤って飲み込む事例も報告されています。分解には約400年かかるとされ、自然界に長く残ることから、生態系への影響が懸念されています。
また、焼却処理には多くのエネルギーが必要で、CO2排出の一因にもなっています。
リサイクルに回すとこんなに変わる!
世界中で驚くほどの数が消費されているペットボトルですが、実は資源としてリサイクルしやすいというメリットがあります。日本での2024年度のリサイクル率は85%に達しており、欧州の42.7%(2021年)、米国の18%(2020年)と比べても、突出したリサイクル率の高さを誇っています。回収率においても94%(2021年)と世界トップレベルです。これだけ高いリサイクル率が実現しているのは、多くの人が普段からスーパーなどでペットボトルを分別したり、家できれいに洗ってからリサイクルに出すといった行動を続けているからです。1995年に始まった「容器包装リサイクル法」で分別が義務づけられたことに加えて、飲料メーカーやスーパー、リサイクルを支える会社などの取り組みも、この仕組みを支える大きな力になっています。
ペットボトルをリサイクルすることで、限りある石油資源の使いすぎを防ぐことができます。また、原料の採掘から製造、使用後の回収·リサイクルまでを通して見たとき、リサイクルをしない場合と比べてCO2の排出量を約42%も減らせるという試算もあります。
その効果は年間で約140万トン以上のCO2削減につながるとも言われていて、私たちがペットボトルをリサイクルに出すことが、サステナブルな暮らしへの大きな一歩になるのです。
無理なくできることから始めよう
ペットボトルをリサイクルすることも大切ですが、そもそもの使う量を減らすことのほうが、もっと地球にやさしい選択になります。
たとえば、一般的な500mLのペットボトル1本をつくって、使って、リサイクルするまでに出るCO2は約119gといわれています。でも、同じ容量のステンレス製のマイボトルを100回使えば、1回あたりのCO2排出量は約13.9g。
つまり、マイボトルを繰り返し使うことで、使い捨てのペットボトルと比べてCO2を約88%も減らせるんです。
ペットボトルは、私たちの暮らしを支える便利な存在です。しかしその裏側には、資源の消費や廃棄物の増加といった課題もあります。
だからこそ大切なのは、完璧を目指すことではなく、できることから始めること。使う量を少し減らす、飲み終わったらきちんと分別する。マイボトルを持ち歩く、給水サービスを活用する——そんな小さな選択の積み重ねが、未来の環境を少しずつ変えていきます。
サステナブルな暮らしは、特別な誰かの取り組みではなく、日々の中のささやかな行動から始まります。今日の一つの選択が、循環型社会への一歩になるのかもしれません。